2026/11/01 08:52


ライフエッセンシャルズ編集部|Tokyo Poster Diary

本を開く。その小さな動作が、部屋にもうひとつの風景をつくることがあります。本日の一枚は、楠木裕子がモロー・クスノキのためにデザインした《Fragments》のポスター。淡い色のページに文字が散らばり、手描きの輪郭が、きっちり決まりすぎない心地よさを残しています。



日本人建築家の手から生まれた一枚https://tokyovintage.base.shop/items/144990233

楠木裕子は、ニコラ・モローとともに、2011年にパリで建築設計事務所モロー・クスノキを設立しました。建物を考える仕事と、紙の上で線を探す仕事。その両方がつながっているところに、このポスターを眺める面白さがあります。

建築家のポスターと聞くと、整然とした設計図を思い浮かべるかもしれません。けれど《Fragments》でまず目に入るのは、本のかたちと余白。読書を始める前のような、まだ言葉になっていない時間を想像させます。



2026年春、パリで開かれた《Fragments》

同名の書籍に合わせ、イヴォン・ランベールでは2026年4月17日から5月3日まで展覧会が開かれました。会場では、楠木が15年以上にわたり描いてきた手描きのドローイングを通して、建築を考える過程が紹介されました。完成した建物だけを見るのとは違う、線が何かを見つけていく時間に触れる展示です。

このポスターも、その展覧会に合わせてつくられたもの。会期と場所の文字を読むと、一枚の紙が、パリで起きた出来事の記録でもあると気づきます。現在開催中の展覧会ではなく、春の展示から生まれた一枚です。



イヴォン・ランベールという場所

イヴォン・ランベールは、パリで書店、出版、展示をつなぐ場所です。2017年に開かれたフィーユ・デュ・カルヴェール通り14番地の空間には、アートブックや展覧会図録、版画、ポスターが並びます。本を読むこと、作品を見ること、紙の作品を持ち帰ることが、ひと続きになる場所といえるでしょう。

美術館の大きな展示だけでなく、こうした場所から届くポスターにも、その街の文化との出会いがあります。日本人建築家の線を、パリの出版と展示を通して、自分の部屋で眺める。その距離のつながりも、一枚を選ぶ楽しみです。



暮らしの中では、本棚の近くへ

合わせてみたいのは、木の家具、生成りの布、そして数冊の本。淡い色を部屋の中でもう一度拾うと、ポスターだけが浮かず、静かに馴染みそうです。周りにものを詰めすぎず、壁にも余白を残してみてください。

本棚の横や、読みかけの本を置く椅子の近くに。読書の途中でふと顔を上げたとき、壁にも開いた本がある。そんな小さな呼応が、いつもの部屋の見え方を少し変えてくれそうです。

掲載作品:HIROKO KUSUNOKI / MOREAU KUSUNOKI《Fragments》

Tokyo Poster Diaryで作品を見る
https://tokyovintage.base.shop/items/144990233

参考資料:Yvon Lambert《Fragments》展覧会紹介
https://www.yvon-lambert.com/fr/blogs/exhibitions/moreau-kusunoki-fragments/Moreau Kusunoki公式ニュース
https://moreaukusunoki.com/news//Yvon Lambertについて
https://www.yvon-lambert.com/fr/pages/about

note記事
https://note.com/matchgate829/n/n5058efadd04d